飽和潜水員になれない初期設定

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まるばつ仕事

海上自衛隊には飽和潜水という、長期間深い海に潜るための設備や技術を保有している。

日本で飽和潜水をしたければ、海上自衛隊、アジア海洋、日本サルベージのいずれかに入職する必要がある。

上記3つのなかでは、海上自衛隊に入職し飽和潜水員を目指すのが、学力・語学面でハードルが低いのでおすすめ。

ただし、すべての海上自衛官が飽和潜水に携われるわけではなく、入隊前・入隊時・入隊後の初期設定によって詰むので注意が必要。

今回は、飽和潜水への道を潰す不可避地雷を3つ解説する。

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入隊前:閉所恐怖症

閉所

飽和潜水は潜水の性質上、狭い空間で長期間生活する必要がある、使用する潜水器具も頭をすっぽり覆うヘルメット、寒さから身を守るため、分厚い温水スーツを着用する。

潜水作業のため、深海に移動する際は、顔を突き合わせるくらい狭い水中エレベーターに乗るし、減圧室も4畳半程度しかなく、窓の数も少なく小さい。

その中で、成人男性6名が生活するという、とても圧迫感・閉塞感のある環境を長期間強いられる。

飽和潜水中の生活はこちらを参照

座敷牢よりヤバい!?飽和潜水中の過酷な生活
飽和潜水は、高圧状態に保たれたタンク内で、長期間生活することになる。そこは、地上の生活とかけ離れた全くの別世界。高密度のガスが満たされた環境で、生身の人間が長期間過ごすのは非常に過酷。今回は、飽和潜水中の、不自由過ぎる生活について解説する。...

潜水する深度も深いので、光は届かず真っ暗闇の海底での作業。

閉所恐怖症じゃなくても、不気味さや不安を感じてもおかしくない。

一番の恐怖は、飽和潜水を一度始めてしまうと、生命に関わる緊急事態が生じない限り、その空間から逃げられないこと。

普段の生活や職場であれば、自らの意志でその場を離れたり、近づかない選択ができるが、飽和潜水ではそうはいかない。

高圧環境下にいる人間を、急激に大気圧環境に戻してしまうと、減圧症が引き起こされ身体に重篤な障害を生じる。

逃げ場がなく、最後までやり切るしかない状況を考えると、閉所恐怖症の疑いがある人は、飽和潜水員に向かないので、あきらめた方が賢明。

日常生活でさえも不便を感じる精神症状で、完治させることは難しく、一番は危うきに近づかず。

以下に閉所恐怖症の特徴を紹介。

  •  閉所、暗所など閉塞感を感じる場所に強い恐怖感を感じる

”狭い空間”のみならず、たとえ広い空間であっても”自由の利かない閉塞感”のあるところも含まれる。

例えばうす暗い映画館、窓のない部屋、フルフェイスのヘルメット、全身スーツや水の覆われるダイビングなど。

  • 過去に狭い場所に閉じ込められた経験がある

閉所恐怖症発症原因の一つだと思われているものに、過去のトラウマがある。

幼少期いたずらをした罰として物置小屋に閉じ込められたり、押し入れにかくれんぼをしていて友達に出られないよう意地悪されたり、大人になってからも災害や事故などで建物やトンネル、洞窟などに閉じ込められた経験などがこれにあたる。

  • 几帳面で心配性な性格

閉所恐怖症の人の多くで共通していることは”几帳面で心配性”であること。

そのような性格だからこそ不安を抱えることが多い。

しほちゃん
しほちゃん

もし今、地震が起きてエレベーターが止まったらどうしよう。。。

 

何年か前にトンネルで自己があったけど、このトンネル通って大丈夫かしら?崩れたら閉じ込められてしまうんじゃ。。。

強度の不安は、閉所恐怖症を発症する引き金となる可能性がある。

逆に言うと「大抵のことはなんとかなる」「そんなに頻繁に悪いことは起きないだろう」と楽観的に物事を考えるようなタイプは、閉所恐怖症になる可能性は低いと考えられる。

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入隊時:配属の地方総監部

呉

海上自衛隊の部隊は、5つの地方総監部に分けられている。

北から大湊地方総監部(青森)、横須賀地方総監部(神奈川)、舞鶴地方総監部(京都)、呉地方総監部(広島)、佐世保地方総監部(長崎)

平隊員は、部署移動があっても、地方総監部内しか移動しない。

逆に言うと、自分が配属された地方総監部に、飽和潜水部隊がなければ詰みということ。

配属先は、基本的に本籍地最寄りの地方総監部となるため、青森以北、上越、九州に住んでる人はアウト試合終了。。。と言いたいところだが

横須賀や呉以外の配属先から、飽和潜水員になった事例があるので、一縷の望みとして紹介しておく。

  • 地方総監部を変更する

下士官クラス(海曹士)の地方総監部を跨ぐ転勤は、基本的には行われないが、本人が希望する場合はその限りではない。

要するに、「飽和潜水員になりたいから呉(もしくは横須賀)に転勤したい」と打診し続ける。

ただし、あなたが抜けた人員は、どこかから埋める必要がある、同総監部間なら人員補充は比較的簡単かもしれないが、総監部を跨ぐとなると難しいのが現実、だからめちゃくちゃ時間がかかる。

唯一出来ることは、自分で交代者を探すこと。

理想は、同じマーク同じ階級、身近なところだと術科学校の同期が狙い目。

上司に「神奈川にいる○○3曹っていうのが、舞鶴に希望出しているみたいです」とこちら側で人事のお膳立てをしてあげれば、人を探す手間が省け、希望が叶う可能性が高まる。

それでも、人事は思うようには動かない、希望を叶えた人は叶うまで諦めなかった人なのだ。

  • B幹になる

幹部自衛官(C幹除く)になると、人事異動の範囲が地方総監部を超えて全国に広がる。

身代わりも伝手もない、何年待っても希望が通らないが諦めたくない、飽和潜水するために手段は選ばないという人なら、幹部試験を受けてB幹になり、飽和潜水員を目指す方が早いパターンもある。

注意点は、幹部になるとダイバーとして潜ることより、潜水指揮官として管理する立場になるので、飽和潜水で潜る機会は圧倒的に少なくなる。

「折角飽和潜水員になれたのに、全然潜れない、しかも人が潜っているのを、嫌でも指揮官として間近で見てないといけないから、余計にストレスがたまる!」なんてことになるかも。

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入隊後:メインマーク選択

ソナー

最後は、唯一入隊後に回避できそうな地雷、飽和潜水員になれないメインマーク(主特技)の存在である。

下士官として海上自衛隊に入隊したら、教育隊(神奈川、京都、広島、長崎)に集められ基礎教育を受ける。

基礎教育中に適性検査が行われ、メインマークを選択する。

何も知らない新兵に、今後自衛隊生活で一生ついて回るメインマークに関する説明は、ほとんどされることはない。

ちなみに運用と魚雷は、全職無適性者の救済マーク、『無能力者じゃ可哀そうだから、名前2つ与えるから好きな方を選びな(私のこと)』

最初のマーク選択に潜水士はない、なぜなら潜水士はメインマークではなくサブマークだから。

主特技を取得したうえで、改めて希望者のみが取得できる。

ここで注意するのは、冒頭でも触れたとおり、潜水士になれないメインマークが存在するということ。

結論としては通信と水測(ソーナー)と航空系

通信と水測は、どちらも耳を商売道具として使う仕事、一方で潜水は気圧の変化との戦い。

潜水員は海中に潜るので、耳の中に水が入ることもあり、耳鼻科系の疾患に罹るリスクが高いし、耳抜きができないと、最悪の場合鼓膜を破る可能性がある。

飽和潜水はサブマークでしかなく、万が一減圧症や事故などで潜水を続けられなくなれば、メインマークの仕事に戻るのが通常の流れだが、潜水では耳を悪くする可能性が高いため、通信と水測はメインマークの仕事に戻ることが難しくなるのが理由。

航空系は、そもそも飽和潜水部隊とは無縁。

航空機に搭乗するダイバーもいて、潜水課程を学びに来る同士でもあるが、潜水艦救難・航空機救難を主目的とする飽和潜水員としては『海にだけは落ちるなよ』って感じ。

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まとめ

飽和潜水員になれない、初期設定を時系列でまとめる。

  1. 閉所恐怖症(入隊前)
  2. 配属地方総監部(入隊時)
  3. メインマーク(入隊後)

1は絶望的、2は運と忍耐次第、3は知っていれば回避可能の地雷。

無知でも、たまたま飽和潜水になれる人もいる(私:1狭いところ落ち着く、押し入れとか好き、2本籍が東海地方で横須賀配属、3無能者ゆえの魚雷一択)

教育隊の分隊付・分隊士・分隊長・各教官は、海上自衛隊すべてのマークを把握していない。

彼らの目的は、できるだけ多くの隊員を辞めさせず、次にバトンタッチすることである。

『サブマーク取得なんて、術科学校終業してメインマーク取ってから配属部隊の長が考えればいい、無職無能の雑魚が生言ってんじゃねぇ』って心の声が聞こえる。

せめて、飽和潜水員になれないメインマークを選ばなければ、永久に飽和潜水員への道が閉ざされることはない。

初期設定は、あくまで飽和潜水員になるための最低条件であり、クリア後は3つの地獄の選抜教育課程が待ち受けている、無職無能の海上自衛官から飽和潜水員になる道ははるかに遠く険しい。

最終到達点【飽和潜水員】に至る地獄の教育3課程
海上自衛隊は、日本で数少ない飽和潜水という方法を用いて、恒常的に潜水作業をしている組織の一つ。飽和潜水は潜水艦や航空機救難、海底遺失物捜索など、決して欠かすことのできない重要な任務を背負う。潜水艦が安心して潜れるのは、飽和潜水員や深海救難艇...