飽和潜水員あるある3つ紹介

飽和潜水

飽和潜水という潜水方法をご存知でしょうか?

海底のパイプライン敷設や海上建造物のプラットホーム建設、潜水艦救難など深海で長時間作業を必要とする場面で活躍する潜水法です。

レジャーで行われているスクーバダイビングは空気の入ったボンベを背負い約40mまで潜ることが出来ます。

しかしそれよりも深い所まで潜ろうと思ったときに障害となるのが窒素中毒と呼吸ガス量の制限、そして減圧症です。

それらのリスクを減らすもしくはなくすために考えられた潜水技術の一つに飽和潜水が挙げられます。

飽和潜水は呼吸するガスを空気からヘリオックスと呼ばれるヘリウムと酸素の混合ガスにすることで窒素酔いが起きないよう調整されています。

また通常呼吸するガスは背負ったボンベからではなくマザーシップからホースを介して供給されるため呼吸ガス量の制限はほぼありません。

最後の減圧症については体内にガスを限界まで溶け込ませているため、浮上時間は潜水時間ではなく潜水深度でしか変わらないという特徴を活かしコンピューター制御による1時間に1m浮上という安全速度が守られている減圧症が起きにくい安全な潜水法として確立されています。

今回は飽和潜水員だからこを身に沁みついた癖、つまり飽和潜水員あるあるを3つ紹介します。

配管を通る音でガスの種類が分かる

配管の音

飽和潜水で使われるガスにヘリウムがあります。

ヘリウムは空気と比べ分子が小さく軽い性質があります。

バルブ操作でガスを流すとシューっと気体が流れる音がするんですが、空気とヘリウムでは流れる音に違いがあります。

音の伝導速度が空気と比べ約3倍もあるヘリウムが流れる音はやや高くなります。

飽和潜水は経験上気体が流れる音で空気かヘリウムかを判断することが出来ます。

もちろん経験の浅いころは気体が流れる音なんかに違いがあることに気づくこともありませんでした。

しかし、この音でなんか変だな?と気づけることは大きな事故を未然に防ぐことに繋がります。

印象的な体験がありました。

先輩と水中エレベーター(PTC)で作業中の出来事です。

配管内のガスを洗い出すためPTC内にガスをパージしようとした時、最初は空気の流れる低い気体の流音だったのですが途中からシュオン!と音が一オクターブ上がりました。

先輩が直ぐにバルブを止めたため、ヘリウムが狭い空間内に充満することはありませんでした。

純ヘリウムガスを吸うと酸欠になりあっという間に意識を失います。

もし倒れていてしばらく発見されなければ命に関わる事故に繋がるところでした。

このインシデントは洗い出す元のガスを間違えていたのではなく、配管内の残ガスにヘリウムが入っていたようです。

ガスが流れる音について常に注意を払うことを身を持って体験した出来事でした。

時間の遅れや進みに敏感

遅れ進み

飽和潜水はコンピューター制御で潜航や上昇を行います。

しかし普段の訓練では手動でバルブを操作して圧力を掛けたり抜いたりすることが多いです。

潜るスピードも浮上するスピードも決まっていて特に浮上するスピードは速いと減圧症を引き起こす恐れがあるので、特に厳密に管理されています。

バルブ操作をする機会が多い飽和潜水員の特徴かもしれませんが、加減圧速度にめっちゃ!細かい!遅れも進みも出しちゃいけないの?っていうくら時間に厳しいです。

もちろん減圧に関しては命に関わることなので飽和潜水員になるまでの教育課程でそれはもう恐怖を覚えるくらい厳しい指導を頂きました。

それに比べ加圧の速度はそんなに重要視していませんでした。

実際、訓練や実務では迅速に海底まで潜り作業を行う必要があるので、潜航時間にも厳密になることはプロとして必要なスキルの一つだということをだんだんと理解できるようになりましたが、それは飽和潜水員になって徐々に経験を積んでからのお話です。

ある程度飽和潜水員として経験を積んで感じたことは、実務でイレギュラーなことが発生するすることはよくある話です。

訓練の積み重ねで人的イレギュラーを最小限に留め、余計な心配事を増やさないようにすることがいかに大切かが分かります。

そのためにも速やかな潜航と安全速度を守った上昇は体に染みつけておく必要があるのではないかと思います。

ハッチ(扉)に対する立ち位置

ハッチのケッチ側

タンク内で生活するのが飽和潜水員ですが、高圧環境であるタンク内と大気圧を仕切っているのが分厚い鉄の扉通称(ハッチ)です。

普段、内開きの扉を開くときってどこに立っているか意識することはほとんどないと思います。

突然ですがここで問題です。

飽和潜水員が扉を開けるときどのような立ち位置で扉を開くでしょうか?

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

正解は・・・飽和潜水員は必ず蝶番の反対側に立って扉を開きます。

これは万が一タンク内に圧力が残っていた場合、急に開いた扉で怪我をしないためです。

またハッチの下で作業することもあり、ハッチを閉めているケッチが何らかの理由で緩んだ際に、超重い鉄の扉の下敷きになることから身を守るためです。

扉の向こうとこっちの気圧に差があるなんて考えるのは、飽和潜水員くらいでしょう。

逆にそれだけ特殊な環境で仕事をしていると言えます。

普段の生活でも扉の開く側に自然と立っていることが多いですね。

安全は意識しないと守られにくいですが、癖付ける(習慣化する)ことも未然に防止する手段の1つではないかとも感じます。

まとめ

飽和潜水員ならだれもが分かるあるあるを3つ紹介しました。

職業病と言われてしまうかもしれませんが、飽和潜水員は音や時間に敏感で安全に対する意識が高い人が多いと言えます。

ダイバーは小さい事にはこだわらない豪気なイメージがあるかもしれませんが、高度な潜水技術を要求される飽和潜水員はむしろ繊細で細かいことを気にするような女々しいと思われる部分が多く存在すると言えるでしょう。

もちろんこれは性格だけでなく仕事柄そうならざる負えないとも言えます。

あるあるを通じて飽和潜水員の意外な一面を知ってもらえるきっかけになってもらえたかもしれません。

飽和潜水員的にはそんなマイナス面をむしろ晒さなくてもいいじゃないかと思われそうですが、これから飽和潜水を目指す人にとって実はこんなことも気にしながら仕事するんだよということが分かれば裾野が広がるかと思い紹介しました。

飽和潜水に必要なのは体力や知識以上に細かいことを気にすることが出来る几帳面な心が必要です。

飽和潜水に興味があるけど体力に自信のないそこの君。

体力や知識は後からいくらでも付いてくるが、繊細な心があれば意外と務まる仕事かもしれないぞ。

可能性があるなら挑戦してみることを強く勧めたい。

人生一度きりだ!

 

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