37歳から新人准看護師として急性期の診療所病棟に配属されました。
多くの老人・障碍者施設を持つ大きな法人が経営する、自前の一時救急的な診療所となっていました。
なので、入退院は毎日目まぐるしく、約2週間でほぼすべての患者が入れ替わります。
また患者層も、いわゆる普通の成育歴の人は少なく、様々な基礎疾患や障害を持った人たちが、高齢化に伴い体調を崩し来院するため非常に急変が多いのが特徴でした。
片田舎にある古びた診療所で、病棟とはいえ19床しかない小さな病棟での勤務なんて楽勝に仕事こなせるでしょうと入職前は高をを括っていました。
ところが、実際は激務や人間関係を理由に僅か半年で退職することとなりました。

退職後は診療所在職中に目星をつけていた、近所の透析クリニックへ無事再就職を果たすことが出来ました。
准看護師は正看護師と比べると間口がやや狭まりますが、それでもかなり潰しが効く資格です。
一般の人たちが想像する所謂病院以外(老人施設、デイサービス、訪問入浴、保育園、検診センターなど)にも看護師が働く場があります。
そんな様々な就職先があるにも関わらず、何故透析クリニックを選んだのかを紹介したいと思います。
急変の確率が低い
診療所病棟勤務で、自分がいかに咄嗟の判断が苦手ということがとてもよく分かりました。
受け持ちの病室を回って患者の様子を見に行くと、冷や汗かいてゼーゼー呼吸していたり、いくら喀痰吸引しても血中酸素飽和度が上がってこなかったり、バイタルは問題なくても刺激に反応なかったりと朝の送りで「お変わりありません」って言ってたじゃん!なんで?どうじで??(鼻垂れ)
もう急変とか無理です
— シズカ.no wakuwaku no life (@ii8sR4rL0v1IHXm) June 22, 2020
もう急変とか無理です
もう急変とか無理です
もう急変とか無理です
人呼んだだけでも十分よくやったでしょ
あとは自称ベテランが何とかしてよ
夜勤や日直で一人対応なんてさせてはいけない
いつか出来るようになる気がしません
自分が急変してどうにかなりそう
と毎回パニックに陥るのが嫌で嫌でしょうがありませんでした。
なので、再就職先候補の第一条件として急変の確率が出来るだけ低い、状態が安定している患者を看護する仕事先が挙がります。
透析は導入されると一生続ける治療です、週に3回、隔日ごとに実施するので医療者も患者もルーチンワーク的なものになります。
年齢も幅広く20代から90代まで様々、仕事をしながら通っている人たちも多く、長年安定して治療を続けている人が多く、むしろ透析自体で体調を崩す人の方が少ないのが現状です。
それでも高齢者の割合は年々増加してきているので、心肺機能低下に伴う急変の確率は上がってきているのかもしれませんが、最低でも1時間おきに血圧、脈拍測定は実施されますし、透析開始前や途中で数値に変化があればこまめにチェックすることもできます。
血圧が下がったり、足がつったり、気分が悪くなることが予想できる場合は、あらかじめ薬を飲んで予防することもあります。
透析クリニックで治療するメインの目的は「血液の浄化」と「余分な水分除去」になります。
その2つを行う上で、体に起きうる状態悪化は長い透析の歴史の中である程度分かっていることであり、それと同時に対処方法も大体確立されています。
つまり透析クリニックは
- 患者層が某病棟と比べ若い
- 基本的に普通の生活を送っているので体調は安定している
- 透析中はこまめに状態の観察ができる
- 調子が悪くなる前に予防できる
- 万が一急変しても対処方法が確立されている
上記の特徴があることから急変の確率が低く、パニックになりやすい私でも、何とか続けられるのではないかと考えたわけです。
個室で孤独にならない
病棟は個室から4人部屋まであり、各部屋ごと独立した空間となっています。
患者本人や家族の希望、集中的な治療・観察が必要な場合、感染拡大防止の隔離など長期間入院することになる病棟では病室が細かく区分けされているのが一般的です。
患者にとっては他人と四六時中一緒にいなくていい個室は、幾分か気分が安らぐ空間として機能するのではないでしょうか。
しかし、患者を見る側からすると目の届きにくい個室で急変が起きると大変です。
病棟勤務では一人の看護師が複数の部屋の複数の患者を見ることが多くあります、なので一人の患者と関わる時間は非常に短く、部屋を訪れる機会も状態が安定していると判断すれば1日3回程度になります。
ベテランたちは変化の兆候をいち早く察知して、相談や処置などを行うことが出来るのでしょうが、新人准看護師には無理。
1日3回しかない定時の部屋巡回をしたときに個室であれ?この人、なんかヤバそう?どうしよう?となると孤独と不安で頭がフリーズします。
ごく稀ですが検査や所用で看護師が短時間ですが出払うこともあり、そんなときに急変にぶち当たると生きた心地がしません。
また、受け持った人以外基本的に病室に人が出入りすることがない上に、たとえ誰かが部屋の前を通ったとしても死角が多くほかの看護者が何かしていても気づくことは難しい環境です。
つまり、個室で急変が起きたとしても、オロオロしている様子など誰も見えませんで、もちろん誰からも「どうしたの?」「大丈夫?」と声を掛けられることもありません。
ナースコールを押しても配属された病棟は基本的に受け持ちの看護師が対応する暗黙のルールがあるので、よほど長い間鳴らし続けない限り人は来ないため、声を張り上げ助けを呼ぶ必要があります。
何か起きた時に患者と自分しかその空間にいない、声を掛けられる人が近くにいない。
自分が何かしないと命に関わるかもしれない状況が密室で起きるというストレスは新人准看護師のメンタルを激しく削っていきます。
そんな病棟の病室と比べ、透析クリニックは大きなフロア一つで仕切りはなく、ある程度の間隔を置いてずらっとベッドと透析機器が並び、全体を見渡すことが出来るつくりとなっています。
個室ではないので、患者と2人きりになることもなく、他のスタッフも立ち上がって周りを見渡せば直ぐに見つけることが出来る環境です。
受け持ちのフロアは決まっていますが、適宜人手が必要なところに受け持ち関係なく協力しに行くという感じで業務が行われています。
患者の様子が変でも直ぐにスタッフへ声を掛けられる、他のフロアの人にも声を掛けやすい、声を掛けなくても困った素振りをしていると声をかけてくれるなど、病棟での不安要素をほぼ全て払拭してくれています。
透析クリニックは、常に頼れる人が近くにいるし、皆いろいろ気に掛けてくれます。
これは新人准看護師にとって非常に心強いし、安心して働ける素敵な職場ではないでしょうか。
残業がほぼない
透析は時間が決まっている治療です。
基本的には4時間で終了します。
もちろん患者の都合や体調によってスタート時間や透析時間はバラバラなので、早い人と遅い人で約2時間位差があります。
それでもスタート時間のリミットが大体決まっているので午後3時ごろにはすべての患者の透析が終了します。
そこから片づけや明日の準備をして申し送りをして1日の業務が終わりますが、早ければ4時ごろには全てやることを終えて、2日以上先の準備をしたり看護助手や技師の手伝いをしたりして終業時間が来るのを待ちます。
着替えを先に済ませ、タイムカード打刻器の前で定時を待つこともあります。
さすがに毎日ではありませんが、残業を強いられることは少ない職場だと思います(たまに残業したなぁと思ってタイムカード押しても30分程度)
しかも嬉しいことに、残業の申請をしなくても、タイムカードの時間で終業時間をオーバーした分は勝手に計算してくれて残業代としてお手当てが付きます。
今まで勤めていた診療所で新人は「無給残業が当たり前」の精神だったので、転職先の透析クリニックはとてもホワイトな企業です。
新人准看護師であったとしても、残業はないに越したことはありません。
【時間内に仕事を終わらせるのも能力の一つ】というのが今の職場の上司の考えなので新しく仕事を覚えるのも調べ物も全部勤務時間内にさせてくれます。
仕事は家に持ち帰らない精神は、残業や課題浸けで私生活にまで悪影響が出ていた前職とは違い、心にゆとりをもってアフター5や休日を過ごせますし、なにより毎日の出勤が苦ではなくなりました。
診療所と比べ透析クリニックは30分就業時間も短く、前残業や後残業がほぼないので家にいられる時間は実質1日2時間くらい増えました。
朝は布団畳みや洗濯物干し、ごみ捨て、子供たちの保育園登園の準備をしてから出勤できますし、夕は保育園のお迎えもしくは洗濯物の取り込み、お風呂や寝床、夕食の準備が仕事帰りに余裕をもってできます。
休日は課題に追われることなく、家族とゆっくり過ごすことが出来るし、課題をため込んでプリセプターに合わせる顔がない状態にもなりません。
家事育児を分担できると妻の負担も少なくなりますし、家族のために賃金を稼ぐ以外のことで他者貢献が出来るので、やりがいや自己肯定感向上につながります。
長時間労働は自分自身や家族との時間を奪い、心身を疲弊させるだけです。
患者のために看護者が犠牲になるなんて美談でもなんでもない、患者を守るためにはまず看護者の心身を守ることが優先されなければおかしい。
残業を余儀なくされる職場で働き続ける価値を私は見出せませんでした。
そんな私にとって透析クリニックは残業がほぼなく、ワークライフバランスのとれた快適な職場だと感じています。
転職を考えている方は転職サイトを利用するのがとても便利です。
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