透析回路内に薬を入れると味がするのは嘘か本当か?

におい 看護

この間透析を終了する患者の回路内に薬剤を入れると、患者から「今薬入れた?鉄臭ぁおぇー」と鼻をつまんで訴えがありました。

透析回路内に入れた薬は静脈内に入っていくので味がするとは考えにくいですが、実際に患者から味がするという訴えがあることは興味深いことです。

以前先輩方から、回路内に薬剤を入れた時に、味を感じる患者がいるらしいという話は聞いていましたが、正直半信半疑でして、今回初めて直接患者の訴えを直接聞いて初めて「本当のことなんだと」信じるようになりました。

<文献>耳鼻咽喉科28巻9号(1956年9月)「静脈注射による嗅覚について」によると

においのある物質の溶液,たとえばサルバルサン,カンフル,ビタミンB1等の溶液を鼻からかいでみると,それぞれ特有のにおいを感じる。これは即ち鼻性(呼吸性)嗅覚である。一方これらの溶液を静脈内に注射すると7〜8秒後に同様ににおいを感じ,しかも鼻からかぐ場合よりもより強く感じることは既に知られているところである。静脈注射によつてどうして嗅覚が起るかというと,これらの物質のにおいが気道(主として肺)から放散され,これが呼気に混じて主として後鼻孔から鼻腔に送られ嗅神経末梢を刺戟するために嗅覚を起すと考えるのが常識的な考え方である。このことについては既に1916年にForschhei—merがネオ・サルバルサンを静注すると,注射されたサルバルサンのにおいが呼気に混じて出て,来て,これによつて嗅覚が惹起されると述べている。

サルバルサンもカンフルも現在では使用されることはありませんが、ビタミンB1の注射は今も実施されています。

耳にしたことがあるかもしれませんが、にんにく注射と呼ばれるビタミンB1を主成分とする栄養剤を静脈から注射します。

名前の通り口から摂取したわけではないのに、注射後にんにくのようなにおいがするが特徴です。

このにおいは実際ににんにくを食べた場合と異なり、においを感じるのは自分だけで、呼気や体臭としてにんにくのにおいがすることはほとんどなく、他人には分からないとのこと。

においの強い薬剤の一つであるサルバルサンはヒ素を原料とした薬であり、1910年にエールリヒと秦佐八郎が共同で発見した世界最初の梅毒治療剤(抗生物質)です。

名称は救世主を意味する “Salvator” と、ヒ素を意味する “arsenic” から取られていることから、当時の人たちにとっていかに梅毒が恐ろしい病気であったかをうかがい知ることが出来ます。

抗生物質は副作用なしに病原体のみに薬効が及ぶ特効薬として魔法の弾丸と呼ばれることがありますが、改良された「ネオ・サルバルサン」でも副作用があったためペニシリンを利用開始した以降は医療用としては使用されていないようです。

あと殺虫剤として有名なバルサンとは全く関係ありません。

もう一つのカンフルは樟脳(しょうのう)とも呼ばれ、クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留すると結晶として得ることが出来きます。

強く刺すような樹脂系の香りが特徴。

主にかゆみ止めやリップクリーム、湿布薬など塗・張り薬の成分として使われています。

かつては心臓の働きを活発にさせ、血圧を上げる薬(強心剤)として使用されていた過去があり、これが今でも比喩的表現で使われる「カンフル剤」のルーツとなっています。

ちなみに、大日本帝国陸軍医が常時携帯していた衛生材料の中にもカンフルは入っていたようです。

負傷兵の応急処置に強心剤は必要不可欠とはいえ、現在はカンフルに強心剤といえる効果がないことが分かっています、当時使用してみて効果のほどはどうだったのか?興味深いところです。

長い余談でした、話を戻します。

透析時に投薬される薬は造血剤や鉄剤、ビタンミンD剤などが主で匂いを感じることは少ないようですが、敏感な人には感じることがあるようです。

皮下にしても皮内にして筋注にしても時間的な差があるとはいえ、いずれは血液内に取り込まれること考えると、どんな注射であっても匂いを感じる可能性はあるということになります。

ということはインフルエンザなどの予防接種でも、もしかしたら味がするかもしれないと思うと、次回摂取する際は、期待せずにはいられない。(筋注は時間が掛かるからむずかしいでしょうけど)

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