飽和潜水で使用するヘリウムのデメリット

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ヘリウム仕事

飽和潜水で主に使用するガスは、純ヘリウムやヘリウム酸素です。

深く潜るときには、空気の替わりにヘリウムを使わなければ、窒素酔いや酸素中毒など人体に致命的な症状が現れます。

しかし、現在飽和潜水で使用されているヘリウムも万能の不活性ガスではありません。

ヘリウムを使ったときに生じる、2大デメリットとその対応について紹介していきます。

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ヘリウムボイス

ヘリウムボイス

ヘリウム酸素を呼吸すると、特徴的な甲高い音声に変化します。

ディズニーアニメに登場するドナルドダックの声に似ていることから、ドナルドダックボイスとも呼ばれます。

パーティーグッズなどで市販されている、ヘリウム酸素缶が一番身近なものかと思います。

飽和潜水中は、終始ヘリウムボイスとなり、どんなに野太い声の人でもカワイイ声に変わります。

カワイイで済めばデメリットのうちに入りませんが、深度が深くなるにつれて非常に聞き取りづらくなり、300mを超えた辺りからダイバー間の会話は困難を極めるようになります。

声は聞こえているのですが何を言ってるか全く理解できないので、筆談するのは時間も掛かるし、面倒なのでもっぱらジェスチャーで意思疏通を図ることになります。

言葉が通じにくいヘリウム環境下でも、アイコンタクトや表情、仕草などから何となくニュアンスは伝わると言われますが、コミュ障な私にとっては、人の目や顔を見て話をするのは苦痛以外の何物でもなかったので、非常に苦痛だったことを記憶しています。

タンクの外とやり取りする際は、ヘリウムボイス修正器を介しているので、ダイバー間より比較的聞こえがよくなりますが、それでもゆっくりハッキリ喋らないと何度も聞き返されるはめになりストレスが溜まります。

ちなみに、タンク外からの声やテレビの音声は普通に聞こえます、スピーカーからの音はヘリウムに影響されないようです。

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熱電導率が高い

寒い

ヘリウムは、空気に比べ熱が伝わりやすいという特性があります。

熱さ寒さに敏感になり、快適に過ごせる温度域が極端に狭くなります。

普段の生活で許容できる温度差は±10℃程度の幅がありますが、300m相当の高圧ヘリウム環境下では±1℃程度まで縮小します。

痩せたダイバーは服を着こんで毛布にくるまっているのに対し、太ったダイバーはシャツ一枚で汗をかきながら内輪を扇いでいるくらい極端な差が生まれることになり、飽和潜水ではよく見かける光景となります。

300-400mの飽和潜水では、タンク内の温度を30℃前後に設定して、ちょうどいいといった感じですが、人が動いたときのわずかなガスの流れであっても、ヒンヤリする感じがあります。

タンク内の温度は、0.5℃単位で微調整可能となっているので、ダイバー間で相談し半分以上の人が暑いor寒いと感じるときは、温度設定を変更してもらうようにお願いします。

着るもの掛けもので調整出来るドライ環境はまだいいですが、潜水中のダイバーの保温はとても重要となります。

ただでさえヘリウムの影響で熱損失が著しいうえ、深海の海水温度は年間通じて低く保たれています。

ウェットやドライスーツでは、長時間の作業に耐えることが出来ないため、飽和潜水では積極的にダイバーを温めるために、温水を流せる温水服を装着して体温を保ちます。

かなり熱めのお湯が、温水服の入り口まで来るので、ダイバーは火傷に注意を払いながら微調整を行います。

保温は、体表面だけでなく、呼吸するガスにも気を配る必要があります。

冷たいガスを吸うと、体の中から徐々に冷やされていき、異変に気づいた頃には既に重篤な低体温症になっていることがあります。

飽和潜水で使用されている潜水器には、呼吸ガスが流れる配管やレギュレーターを温水シュラウドと呼ばれるゴムで覆い、その中に温水を流すことで、温たまったガスを呼吸することが出来るようになっています。

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まとめ

ヘリウムを使うことで生じるデメリットを紹介しました。

ヘリウムボイスは、とても特徴的で一般的にも知られていることが多い変化です。

特に深深度でその影響は大きくなりますが、ダイバーが生活するタンク内で、しかもダイバー間でのみの不自由さとなります。

タンクの外や潜水器を使っての交話では、修正器を介するのでストレスはかなり軽減されています。

また、ダイバーの生命に直接危険を及ぼすものではないので、デメリットとしては十分許容できる範囲と言えます。

熱電導率が高い点は、体温維持を難しくしダイバーの生命を脅かしかねない、危険な影響と言えます。

特に水中作業中は、低体温症や熱中症のリスクを念頭に置いて、異変がないかを常に監視する必要があります。

温水の安定的な供給と温度管理が、重要な鍵ということです。

なにかと特殊な飽和潜水ですが、実はそれを専門に仕事をすることが出来ます。

興味を持った人は、海上自衛隊の門を叩いてみてはいかがでしょう。